マッサージは強いほど効く?「気持ちいい」と「効く」は別のものです

施術台にうつ伏せになった女性の肩から背中を両手でほぐす施術の様子

この記事の要約

「強く揉んでほしい」「揉み返しは効いている証拠」「毎日通っても良くならない」——マッサージは“強い・長い・頻回”がいいと思われがちです。

でも体には、一度に受けとめられる「刺激量」に限りがあります。

運動のしすぎが体を傷めるのと同じで、刺激が多すぎると回復が追いつかず、かえって良くなりにくくなることがあります。

この記事では、刺激量の考え方、「気持ちいい」と「効く」の違い、そして1時間・強もみでも良くならなかった70代男性が、短い時間で楽になっていった例をお伝えします。

この記事の要点

・マッサージの刺激量は「強さ・時間・頻度・範囲」の組み合わせで決まる
・刺激が多すぎると、運動のしすぎと同じで回復が追いつかず逆効果になることがある
・「気持ちいい」「揉み返し(だるさ)」は、効いたサインとは限らない
・施術後のだるさや痛みは、基本的に体への負担が大きかったサイン。出ないほうがいい
・症状ではなく「体の変化」を見て、刺激が過剰にならないよう一つずつ確認する
・しびれ・脱力・施術後の強い腫れや発熱などは、念のため医療機関へ

この記事を書いた人

今治市で星野鍼灸接骨院の院長をしている星野泰隆です。
鍼師・灸師・あんまマッサージ指圧師・柔道整復師という4つの国家資格を持ち、20年以上にわたって地域の皆さまの体のお悩みに向き合ってきました。

「強く揉む」ことよりも、体が回復しやすい状態に整えることを大切にしています。

———-

「強く揉んでもらわないと、効いた気がしない」
「マッサージのあとの揉み返しは、効いている証拠だと思っている」
「毎日のように通っているのに、なかなか良くならない」

こんなお悩み、ありませんか?

こうした「強く・長く・たくさん」を求める方は、本当に多いんです。

私の治療院にも、「1時間かけて強く揉んでもらっていたけれど、なかなか良くならなくて」というご相談で来られる方がいらっしゃいます。

でもご安心ください。

実は、マッサージは強いほど・長いほど・回数が多いほど効く、というわけではありません
むしろ体には「ちょうどいい量」があって、それを超えると、かえって回復の妨げになってしまうことがあるんです。

マッサージは「強い・長い・頻回」がいいとは限りません

まず知っていただきたいのは、マッサージの刺激の量=刺激量は、「強さ」だけで決まるものではない、ということです。

刺激量は、次の4つの組み合わせで決まります。

ポイント
・どれくらい強く押すか(強さ)
・どれくらいの時間やるか(時間)
・どれくらいの頻度で受けるか(頻度)
・体のどれくらいの範囲をやるか(範囲)

強さが控えめでも、長時間・毎日・全身となれば、刺激量としてはかなり多くなります。
そして体には、一度に受けとめられる刺激量に限りがあります。

ここを超えてしまうと、良くするはずの施術が、体を疲れさせる方向に働いてしまうことがあるのです。

体を変えるのも、傷めるのも「同じ刺激量」です

ベンチに仰向けになりバーベルでベンチプレスをする青いシャツの男性を、トレーナーが補助している様子イメージしやすいのは、運動です。

筋肉は、運動で軽い負担をかけ、そのあと休んで回復する中で強くなっていきます。
でも、回復が追いつかないほど運動を続けると、かえって疲れが抜けず、動きも重くなってしまいます。

これは「オーバートレーニング」と呼ばれ、やりすぎが体を傷める典型的な例です。

マッサージも同じです。

治療を受けたあとは血行が良くなり、体は確かに「変化」します。
ただ、この変化は体にとっての刺激でもあります。

私はよく、こんなふうにお伝えしています。

「45度傾いた姿勢をまっすぐに戻すのも、まっすぐから45度傾けるのも、動く角度は同じ45度ですよね」

つまり体にとっては、良い方向に変わるのも、悪い方向に変わるのも、同じだけの『刺激』なんです。

だからこそ、回復する時間を取らずに刺激ばかり重ねると、体は変化に追いつけなくなってしまいます。
良くするための施術が、かえって負担になってしまうことがあるんです。

「気持ちいい」「だるい」は、効いたサインとは限りません

強い刺激は、「やってもらった」という満足感があって、その場は気持ちよく感じます。
でも、それが体が良くなったということと同じとは限りません

たとえるなら、かゆいところをかくのに似ています。

かいているあいだは気持ちいいのですが、かけばかくほど、またすぐにかゆくなる。
むしろ冷やすだけのほうが、早く落ち着くことも多いものです。

強い刺激も、その場の心地よさと、体が落ち着く方向かどうかは、別なんです。

施術後の揉み返し(だるさや痛み)も同じです。

これは強い圧で筋肉にわずかな負担(軽い炎症)がかかって起こると考えられていて、基本的には体にとって刺激が多かったサインです。

「好転反応」と呼ばれることもありますが、私は出ないほうがいいと考えています。

負担が少ないほど、だるさも出にくくなります。
出たとしても、運動のあとやお風呂上がりくらいの軽いだるさで済むのが理想です。

ただし、施術後に強い痛みが続く・手足のしびれや力の入りにくさがある・押された部分が大きく腫れる・尿が茶褐色になる・発熱するといった場合は、体への負担が大きすぎたサインのことがあります。

念のため医療機関にご相談ください。

また、骨粗しょう症のある方や、血をサラサラにするお薬を飲んでいる方は、強い刺激で内出血などが起こりやすいため、特に注意が必要です。

ちょうどいい刺激(適量)を、私たちはこう見ています

では、「ちょうどいい刺激」はどう見極めているのか。
プロとして大切にしているのは、一度にたくさんの治療をしないことです。

当院では、一つ検査をして、一つ施術をし、その都度体の変化を確認する——これを繰り返します。

痛いかどうか(症状)だけでなく、体の動きや状態がどう変わったかを指標にするので、刺激が過剰になるのを防げます。

施術時間も1回あたり15分ほど。
短いと驚かれることもありますが、体に必要なのは刺激の多さではなく、回復しやすい状態に整えることだからです。

ここが、リラクゼーション(もみほぐし)との違いでもあります。

リラクゼーションは「気持ちよさ」を受け手の希望に合わせて提供するもの。
治療は、原因となっている部分に変化を起こし、見た目や動かしやすさが変わるかどうかを見ながら進めるものです。

どちらが良い・悪いではなく、目的が違うんです。

【実例】1時間・強もみでも良くならなかった70代男性

ここで、冒頭でも触れた70代男性(今治市)の例をご紹介します。

この方は、急に腰を痛めたというより、もともと腰痛があり、だんだんと悪くなって、立っていられる時間が短くなってきていました。

検査をすると、痩せ型で筋力も弱めの方。
つまり、回復に時間がかかり、刺激が多いほど体の負担になりやすい状態だったんです。

来院されたとき、ご本人がこれまでの経過を話してくださいました。

あるお店で30分施術を受けても良くならず、強くしてもらったら少し良かったので、さらに強くしてもらった。
それでもなかなか良くならず、むしろ悪くなる感じもあって、別のところで今度は1時間ほど受けていた。

けれど、初回は良かったものの、2回目からはすぐに戻ってしまい、やめてしまった——と。

もともと体に負担がかかりやすい状態なのに、刺激が強くなって、回復する時間まで奪われてしまっていた。
私はそう見立てました。

初回、ご本人はこうおっしゃいました。

「1時間もやってもらったのに良くならなかった。先生のところは15分くらいって書いてある。そんなので良くなるの?」

私はこうお伝えしました。

「運動でも、いきなりフルマラソンは走れませんよね。はじめは歩くところから。
筋トレも同じで、いきなり長く・たくさんやると体の負担になります。
トレーニングにも回復の時間がいるんです。
治療も同じで、今までと同じことを繰り返すより、まずは体を回復する方向に向けてあげるほうがいいんですよ」と。

通院は、はじめは週に1回。
それを3回続け、そのあとは2週間、3週間と間隔をあけて、合計5回。

良くなってきたところで、ご本人と相談して1ヶ月あけ、検査結果も安定していたので、いったん様子を見ることにしました。

経過の中で、ご本人がこんなふうに話してくださいました。

初回のあとは「こんな短い時間なのに、体の動きやすさが違う」

2回目のあとは「治療のあとにしんどくなることが、ほとんどなかった。いつもは治療後にしんどくなるのに、今回は少しだるさはあったけれど、痛みのぶり返しはあまりなかった。短い時間のほうが楽だった」と。

誤解しないでいただきたいのは、「すべての腰痛に短い時間が正解」ということではありません

この方の体の状態に、短く控えめな刺激が合っていた、ということです。
大切なのは、その人の体に合った刺激量を見極めることなんです。

患者さん自身が気をつけたいこと

最後に、受ける側として知っておいていただきたいことがあります。

「ここが原因だから、ここをこうしてほしい」と、ご自身で決めつけて強い刺激を求めるのは、できれば避けたほうがいいということです。

気になることや疑問は、遠慮なく先生に聞いてください。
そのうえで、見立ては専門家に任せるのがおすすめです。

病院でも、「私はこの薬がいいです」「胃が悪いので、ここを手術してください」とは言いませんよね。

それと同じで、体の状態を見て刺激量を決めるのは、専門家の役割です。
「強く」「長く」を求めすぎないことが、結果的に回復への近道になることも多いんです。

まとめ

マッサージは、強いほど・長いほど・回数が多いほど効く、というものではありません。
大切なのは、その人の体に合った刺激量です。

この記事のまとめ
・刺激量は「強さ・時間・頻度・範囲」の組み合わせで決まる
・運動のしすぎと同じで、刺激が多すぎると回復が追いつかず逆効果になることがある
・「気持ちいい」「揉み返し」は効いたサインとは限らない
・施術後のだるさや痛みは、基本的に負担が大きかったサイン。出ないほうがいい
・症状ではなく「体の変化」を見て、刺激が過剰にならないようにする
・しびれ・脱力・強い腫れ・発熱などがあれば、念のため医療機関へ

「強くしてもらわないと不安」という方も、どうか無理をなさらないでください。

今の通い方や刺激の強さで本当に良くなっているか気になる方、なかなか改善しない腰痛や肩こりでお悩みの方は、当院までお気軽にご相談ください。

治療院選びの基準については、接骨院の選び方|失敗しないための7つのチェックポイントでも詳しくお伝えしています。
あわせてご覧ください。

(鍼師・灸師・あんまマッサージ指圧師・柔道整復師 星野泰隆監修)

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