この記事の要約
仕事中に振り返った瞬間、十数年ぶりのぎっくり腰。
立ち座りと階段が痛くて、市販のベルトがないと動けない。
それでも翌日には、朝から丸一日かかる外せない現場がある。
そんな50代の男性が当院にご来院されました。
少し前から腰に「ちょっとやばいかな」という違和感があったものの、仕事はできるくらいだったので、そのまま続けていた方です。
検査で分かったのは、痛いのは腰でも、元は腰ではないということです。
骨盤の右側が出っ張り、右の膝が外を向き、背骨の前後の動きが悪くなっていました。
この体の使い方で、腰に負担が集まっていたと考えられます。
翌日の仕事の内容を問診で詰めて、どこまでできればいいかを確認したうえで、「明日を乗り切ること」を治療の第一条件に置きました。
初日は首から背中の歪みを整えてから腰へ進め、鍼で筋肉を緩めて、テーピングとコルセットで翌日の負担を減らす形にしました。
翌日の現場は、重いものを避けながら無事に片付けることができました。
そのあとは元にある歪みを整えていき、約1か月で立ち座りも階段もほぼ気にならず、日常生活は問題ない状態まで改善しています。
振り返った瞬間に、腰に「バキッ」ときた
実際に当院にご来院されていた患者さんの症例をご紹介します。
内装工事の現場で働く、50代の大工さんです。
夏が一番忙しいお仕事で、長年ほとんど休みが取れていない方でした。
月曜日、仕事中に振り返った瞬間、腰にバキッと衝撃が走りました。
ご本人の言葉を借りると「あ、やっちゃった」という感覚です。
若い頃に一度ぎっくり腰をして以来、十数年ぶりのことでした。
痛みは左側を中心に腰全体。
立ったり座ったりが一番痛く、階段もきつい。
車の乗り降りも少しつらい。
座っているだけなら痛みはなく、しびれもありませんでした。
翌日の火曜日は仕事を休んで安静にしていましたが、ほとんど動けず。
市販のベルトを巻いていないと、動くのもきつい状態です。
水曜日は午前中だけ仕事をして、昼で切り上げて当院にご来院されました。
実はこの方、ぎっくり腰になる少し前から、腰の違和感を感じていました。
「ちょっとやばいかな」とは思っていたけれど、仕事はできるくらいだったので、そのまま続けていたそうです。
3日分の仕事は断った。でも明日だけは休めない
問診でまず伺ったのは、これからの予定でした。
ぎっくり腰になってから3日分の仕事はキャンセルしたそうです。
ただ、翌日の木曜日だけは、朝から丸一日かかる現場がどうしても外せない。
そこを乗り切れば、お盆休みに入って3日ほど安静にできる。
「まずは、明日をなんとか乗り切らないといけないですね」
問診でそうお伝えして、治療の第一条件を「翌日の仕事の負担を少しでも減らせる状態を作ること」に置きました。
「休めない人」に、当院がしている線引き
休めない人であっても、状況によっては休んだ方がいいとお伝えすることはあります。
ただ、仕事の内容や時間をご自身で調整できる場合は違います。
どこまでのことができればいいのかを問診で詰めて、それが可能かどうかを判断します。
そのうえで、一番いい形で仕事ができる方法を選びます。
今回は、テーピングとコルセットでした。
安静だけが正解ではない場面があります。
安静にして休んだあとも、痛みがぶり返すことはあるからです。
だからこそ、翌日を乗り切ることと、その先の体を整えることを、分けて考えました。
検査で分かったこと|痛いのは腰、元は骨盤と背骨の動き
体の動きを確認していくと、いくつかの特徴がありました。
まず立った姿勢で、下半身はまっすぐなのに、上半身だけが大きく左に寄っています。
骨盤は右側がポコッと出っ張っていました。
この出っ張りは、ご本人に実際に触って確かめてもらいました。
そのまま座ってもらい、もう一度触ってもらうと、出っ張りが変わります。
上半身が原因なら、立っても座っても変わらないはずです。
座ると変わるということは、元は下半身にある。
さらに、右の膝が左に比べて大きく外を向いていました。
背骨は本来、前後にゆるやかなカーブがあります。
このカーブがクッションの役割をしているのですが、この方は腰のカーブが伸びてまっすぐに近い状態でした。
クッションが減っているぶん、筋肉に負担がかかりやすいと考えられます。
問診票には、五十肩とテニス肘にもチェックが入っていました。
左の肩と右の肘の左右差を確認すると、こちらも同じ流れの中で説明がつきます。
背骨の前後の動きの悪さがベースにあり、右の骨盤から股関節の動きが左より悪い。
その傾きが肩甲骨まわりの緊張につながり、上を向く作業で首がしんどくなったり、肩や肘に負担がきやすくなったりしていると考えられました。
施術と、翌日に向けた帰し方

この日は、首から背中の歪みを整えることから始めて、腰と骨盤へ進めました。
鍼で筋肉を緩め、腰からお尻、背中にかけてテーピングを6本貼っています。
施術のあと、立った時の傾きが減っているのをご本人にも確認してもらいました。
固まっていたところを緩めると、反動でだるさが出たり、別の場所が痛くなったりすることがあります。
ただ、明日は仕事がある。
なので、その反動がなるべく出ないように調整してあります、とお伝えしました。
経過|翌日の現場から、月1回の様子見へ
翌日の木曜日。治療のあとは楽に動けるようになっていて、仕事に行くことができました。
重いものを持つのはなるべく避けて、できる範囲の仕事をこなす。
仕事終わりには張りと痛みが出てきたものの、休み前の仕事をなんとか片付けることができました。
お盆明けの3回目。
「楽になりました」
そう言って来院され、立った姿勢も、初診の時と比べて大分まっすぐになっていました。
ここから、詰めて通う段階を終えて、間隔を空けていく段階に入ります。
約3週間後の4回目。初診で一番痛かった立ち座りと階段は、ほぼ気にならなくなっています。
日常生活は問題ありません。
仕事のあとには軽い痛みや張りが出ますが、仕事は相変わらず忙しく、遠くの現場に出かけての作業が続いていました。
初診で気になっていた肩と肘も、仕事で動かしても気にならないとのことでした。
このまま、メンテナンスで体を整えていくことになりました。
セルフケア|足の向きをそろえる

※写真はイメージです
この方にお伝えしたセルフケアは、足の向きです。
足の指が向いている方向に、力は入りやすくなります。
つま先が外に開いた立ち方だと、体重はかかと寄りに乗りやすくなります。
つま先が内に向いた立ち方だと、今度はつま先寄りに乗りやすくなります。
重心が前か後ろに偏ると、骨盤の傾きも一緒に変わりやすくなります。
骨盤が前に傾くと重心は前へ、後ろに傾くと重心は後ろへ移る関係は、姿勢の研究でも確かめられています。
なので、足を平行にそろえて、重心がまっすぐ乗るようにします。
これで歪みが取れるわけではありません。
でも、歪みにくくなります。
一日中ずっとは無理なので、気づいた時に戻すだけで大丈夫です。
痛みを感じる時は、無理をしないでください。
ぎっくり腰の前兆は、足に出ていることが多い
この方が「ちょっとやばいかな」と感じたのは、腰でした。
実は、ぎっくり腰や腰痛の前兆は、腰より先に足に出ていることがとても多いのです。
ふくらはぎがつる。
ふくらはぎがだるい。
太ももが張る。
こうした足のサインを、腰の前兆だと捉えている方はほとんどいません。
足に出ていても、腰の痛みだとは思わないからです。
そして腰が痛くなった時に、初めて「やばい」と思う。
腰の軽い張りを感じた時には、すでに前兆の段階を一つ通り過ぎていることが多いのです。
前兆が足に出ていた方の症例と、その時にできるふくらはぎのケアは、こちらの記事にまとめています。
ぎっくり腰で立ち上がりが辛い40代女性の改善例|実は前兆が足に出ていました
足のサインの段階で来ていただければ、ぎっくり腰まで進む前に整えられることがほとんどです。
腰を痛めるのは、腰に負担がくる姿勢や動きになっているからです。
その元は人によって違います。
今回の方の場合は、股関節と背骨の動きでした。
この場合は医療機関へ
ぎっくり腰の多くは体の使い方や緊張から来るものですが、中には早めに医療機関で確認した方がよいものもあります。
・脚のしびれや、力の入りにくさを伴う
・排尿や排便に異常がある
・発熱を伴う
・安静にしていても、痛みが日ごとに強くなっていく
・転倒や強くぶつけた後から、痛みが続いている
こうした場合は無理をせず、念のため医療機関でも相談しておくと安心です。
ぎっくり腰になっても、明日どうしても休めない仕事がある。
そんな時は、安静にするか無理をするかの二択ではありません。
明日を乗り切る形を作ってから、元にある歪みを整えていく道があります。
腰の痛みでお困りの方は、無理せず、まずはお気軽にご相談ください。
腰痛を繰り返す理由と、当院の考え方は、こちらのページにもまとめています。
(鍼師・灸師・あんまマッサージ指圧師・柔道整復師 星野泰隆監修)
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この記事の要点
・ぎっくり腰でも、翌日に休めない仕事がある時は「明日を乗り切る」形から始められる
・安静だけが正解ではなく、休んだあとに痛みがぶり返すこともある
・痛いのは腰でも、元は骨盤や股関節、背骨の動きにあることがある
・ぎっくり腰の前兆は、腰より先に足に出ていることが多い
・足のサインの段階で整えれば、ぎっくり腰まで進まずにすむことがほとんど
・脚のしびれや脱力、排尿の異常、発熱を伴う痛みは医療機関へ
この記事を書いた人
今治市で星野鍼灸接骨院の院長をしている星野泰隆です。
鍼師・灸師・あんまマッサージ指圧師・柔道整復師という4つの国家資格を持ち、20年以上にわたって地域の皆さまの体のお悩みに向き合ってきました。
痛む場所だけを診るのではなく、体全体の負担を見て、回復しやすい状態に整えることを大切にしています。











