「肩こりと耳鳴りって、関係あるんでしょうか?」
そんなご相談で、私の院にいらした患者さんがおられました。
50代男性、デスクワークを中心にお仕事をされている方です。
経過を聞いていくと、こんな流れでした。
もともと肩こりはあって、家でマッサージ機や電気治療器を当てて、なんとかしのいでいたそうです。
ところが、ある時期から肩の重だるさが急に強くなってきた。
そのうち腕にしびれまで出るようになり、ついには耳の奥で「キーン」という高い音が鳴り続けるように。
耳鼻科で診てもらったけれど「特に異常はありません」と言われ、お薬を2週間飲み続けても、効いている感じがしない。
夜、布団に入って寝ようとすればするほど、耳鳴りが気になって寝つけない。
肩こりが先で、耳鳴りは後から。病院では異常なし。
実は、「耳鼻科で原因が見つからない」と言われる耳鳴りの中には、こうした首肩のコリが影響しているケースが少なくないことが、医学的にも報告されています。
今日は、この方のケースに沿いながら、自宅でできるチェック方法までお伝えします。
同じようなお悩み、ありませんか?
ご自身に思い当たる項目があれば、この記事は参考になるかもしれません。
・病院では「特に異常なし」と言われたけれど、症状はずっと続いている
・薬をもらって飲んでいるけれど、効いている感じがしない
・以前から肩こりはあったけれど、急にひどくなった
・耳鳴りが気になって夜寝られない
・肩こりだけだったのが、痛みやしびれまで出てきて、最近は耳鳴りも始まった
特に、40代後半〜60代でデスクワーク中心の方に多いご相談です。
ご安心ください ── 「異常なし」の耳鳴りには、別の入り口があります
耳鼻科で「異常なし」と言われたのに耳鳴りが続いている。お薬も飲んだ。それでも消えない。
「治らないんじゃないか」と不安になりますよね。
でも、耳鳴りは耳の中だけが原因とは限らないことが、医学的にも知られています。
医療では「体性耳鳴り(たいせいみみなり)」と呼ばれるタイプの耳鳴りがあります。
これは、首や肩のコリ・姿勢のクセ・顎まわりの緊張から起こる耳鳴りのことです。
耳鼻科の検査で「異常なし」というのは、耳の構造そのものに問題がないということ。
逆に言えば、別のところから影響が来ている可能性がある、ということでもあります。その代表が、首や肩のコリです。
体性耳鳴りは、原因にアプローチできれば変化が出やすいタイプです。
「治らない」と諦める前に、首肩から見直してみる価値があります。
よくある思い込み
「耳鳴りは治らない」「肩こりと耳鳴りは関係ない」「耳鳴りがあればめまいや聞こえにくさも一緒に起こる」
── こうした思い込みで諦めてしまう方が多いのですが、いずれも誤解です。
体性耳鳴りは体が整えば変化します。肩こりと耳鳴りは関係するタイプがあります。
めまいや聞こえにくさがなくても耳鳴りは起こります。
体性耳鳴りの患者さんは聴力検査が正常範囲のことが多い、という報告もあります。
耳鼻科で「聴力に異常なし」と言われた方は、こちらのタイプを一度疑ってみる価値があります。
ただし、こういう変化があれば、もう一度病院へ
ここから先は「病院で異常なし」と言われた方向けにお話を進めますが、症状に変化があった場合は、もう一度医療機関に相談してください。
・急に耳の聞こえが悪くなった(突発性難聴は48時間以内の治療開始が大切)
・ぐるぐる回るようなめまいが新しく出てきた
・ろれつが回らない、片側の手足が動かしにくい
・頭痛がひどい・吐き気がある
・しびれがどんどん広がっている
これらは最初の受診時にはなかった新しい症状として出てくることがあります。自己判断で続けず、必ず再受診してください。
特に高血圧がある方は、耳の周りの血流や神経への影響が出やすいため、注意して様子を見てください。
このケースで起きていたこと

冒頭でご紹介した患者さんを実際に検査してみると、首の前側にある胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)が、左右で明らかに違う固さになっていました。
耳鳴りが出ている側だけ、強く張っていたんです。
なぜ、首の筋肉のコリが耳鳴りに繋がるのか。順番に解説していきますね。
1. 耳の中で起きていること
耳の奥には蝸牛(かぎゅう)という、音を感じ取る器官があります。
蝸牛の中はリンパ液で満たされていて、その中の小さな毛のような感覚細胞が音の振動をキャッチして、聴神経を通じて脳に「音」として届けます。
このリンパ液の流れや感覚細胞の働き、聴神経のどこかに不具合があると、耳鳴りという形で症状が出ます。
2. 首肩のコリが、なぜ耳に影響するのか
首から耳の周りには、たくさんの神経と血管が通っています。
胸鎖乳突筋は、耳の後ろから胸の真ん中まで伸びている、首の前側の太い筋肉。
このすぐそばに、自律神経の網目(首の交感神経)が通っていて、頭・耳・顔まわりに分布する神経もたくさん走っています。
胸鎖乳突筋がカチカチに硬くなることで、周りの血流や神経への影響、首〜耳まわりのリンパや体液の流れの停滞が起こると考えられています。
こうしたことが、耳鳴り・首肩のしびれ・頭の重さとして表に出てくると言われています。
胸鎖乳突筋固有のメカニズムについては研究途上の部分もありますが、首・顎まわりの体性感覚と聴覚系の関連自体は、神経学的にも報告されています。
3. 同じ姿勢が続くと悪化していく
デスクワークで前かがみの姿勢が長時間続く。同じ動作を繰り返す。
すると、首〜肩〜背中の筋肉(胸鎖乳突筋・僧帽筋・斜角筋など)が緊張したまま固まってしまう。
筋肉が硬くなると、関節の動きも悪くなる。動きが悪い体で無理に動こうとすると、ちょっとした動作で痛めやすくなる。
季節の変わり目に肩こりがひどくなる方も多いですが、これも気温差による筋肉の緊張が、もともとあったコリを表面化させているからです。
冒頭の患者さんは、まさにこのパターンで悪化していった耳鳴りでした。
ご自身でできるセルフチェック
冒頭の患者さんで私が確認したのと同じことを、ご自宅でも軽く試せます。
胸鎖乳突筋の左右差を見る
胸鎖乳突筋は、耳の後ろから鎖骨の真ん中まで斜めに伸びています。
手順(座っても、寝た姿勢でもOK)
・顔を反対側に少し向けると、首の前側に筋が浮き出ます
・その筋を、親指と人差し指で軽くつまむ
・左右で同じようにつまんでみる
判定の目安
左右とも痛みなく、柔らかい場合は、胸鎖乳突筋の問題は少ないと考えられます。
別の原因の可能性もあるので、症状が続いているなら一度ご相談ください。
耳鳴りがある側だけ硬い、または痛みが出る場合は、体性耳鳴りの可能性があります。
首肩のコリが耳鳴りに繋がっているかもしれません。
⚠️ チェックの注意事項
胸鎖乳突筋のすぐ近くには、頸動脈(けいどうみゃく)という太い血管が通っています。
・強くつまんだり、長くもみ続けたりしないでください
・拍動(ドクン、ドクンという血管の動き)を感じる場所は触らないでください
・高血圧の方や心臓に持病のある方は、軽く指を当てるだけにしてください
・めまい・気分が悪くなる・痛みが強くなった場合は、すぐに中止してください
「触ってみて、硬さや痛みに左右差がある」と分かるだけで十分です。
自宅で気をつけられること
胸鎖乳突筋を強く揉んだり押したりするセルフケアは、上のリスクからおすすめしません。
代わりに、安全に取り組める基本的な工夫を続けてみてください。
・同じ姿勢を続けない:30〜60分に1回、立ち上がって首・肩を軽く回す
・温める:入浴で首から肩までしっかり温める。蒸しタオルもおすすめ
・デスク環境を整える:パソコン画面の高さ、椅子の座面、肘が乗る位置を見直す
・枕の高さを合わせる:高すぎる枕は首が前に出る原因。タオルで微調整できます
・深呼吸の時間をつくる:胸鎖乳突筋は呼吸が浅いと緊張しやすい筋肉です
2週間続けても変わらないときは
姿勢を整える・同じ姿勢を続けない・温める、を2週間ほど続けてみてください。
それでも症状が変わらない、繰り返す、しびれが広がる、聞こえに変化がある、という場合は、首や肩の深部の状態を見てもらう方が早道です。
まとめ
病院で「異常なし」と言われたのに耳鳴りが続いている方にお伝えしたいのは、耳の構造に異常がなくても耳鳴りは起こるということ。むしろその場合、首肩のコリから来ている体性耳鳴りの可能性があります。
体性耳鳴りは、首や肩の状態が整うと変化が出やすいタイプです。
今日からできること:
・ご自宅で、胸鎖乳突筋を軽く触れて左右差を確認する
・同じ姿勢を続けない・温める・深呼吸する、を生活の中に取り入れる
・2週間続けても変わらない、症状が広がる、急な変化があれば、再受診や専門家へ
「耳が悪くなった」と落ち込む必要はありません。
耳の検査で異常がなかったということは、整える余地があるという見方もできます。
無理をせず、お大事になさってくださいね。
(鍼灸師・あんまマッサージ指圧師・柔道整復師 星野泰隆監修)
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